2016.09.27
CDBOOK『蟬丸 -陰陽師の音- 』収録曲について
CDBOOK『蟬丸 –陰陽師の音– 』収録曲
1、一行の賦 (作曲 芝祐靖)
映画『陰陽師』の中で、龍笛・葉二(はふたつ)を源博雅が吹くシーンで使われた美しい楽曲です。曲の背景音として流れているのは、京都下鴨神社で秋に実際に録音された虫の音です。
2、縄文 (作曲 辻祐)
林英哲に師事する辻祐によるソロ。縄文の神を召喚するようなリズムで始まります。
3、陰陽師・メインテーマ (作曲 梅林茂)
フィギュアスケート羽生結弦選手の2015-16シーズンのフリープログラム「SEIMEI」で使用されたことで話題になった映画『陰陽師』のメインテーマをスガダイローが新たに編曲。
アルバムの中では龍笛と磐笛(いわぶえ)が使われています。磐笛は縄文の頃から吹奏祭具として使われた石でできた笛です。
4、蟬丸 (作曲 スガダイロー)
逢坂山に住む琵琶の名手・蟬丸の元に3年間通い続けたという「今昔物語集」にある源博雅の有名なエピソード。それを今回初めて夢枕獏が『陰陽師』の短編として書き下ろしました。曲はこの小説「蟬丸」に出てくる琵琶の秘曲「啄木」をなぞらえた琵琶の音を模した東保光のベースで始まり、松尾慧の龍笛とスガダイローのピアノの美しいメロディが続きます。後半に流れる虫の音、その音の一つとして夢枕獏も録音に参加しています。
5、蟬丸もののけと語る
アルコ奏法を使ったベースと、ピアノの小編。
6、龍神祭 (作曲 スガダイロー)
『陰陽師・夜光杯ノ巻』(文藝春秋)に収録されている「龍神祭」をトリビュートした作品です。「龍神祭」は小説『陰陽師』の中の、音楽を題材にした短編の一つ。「龍神祭」は、善女龍王によって盗まれてしまった源博雅の笛を取り戻すために晴明、博雅、蟬丸が神泉苑へ舟を浮かべ、天竺にあるという阿耨達池(あのくたっち)へ向かうという幻想的な話。神々の集う天竺にあると言われる阿耨達池をイメージした曲です。阿耨達池は仏教経典に書かれた想像上の湖ですが、チベットにあるマーナサロワール湖だとも言われています。
7、道満 (作曲 スガダイロー)
蘆屋道満は、官位を持つ安倍晴明と異なる在野陰陽師。狡獪で奔放なイメージを持つ一方、小説『陰陽師』の様々な場面に登場し晴明とはまた違う魅力を見せます。
妖かしや静謐の美しさだけでなく、おどろおどろしさや激しさもまた小説『陰陽師』の大きな魅力です。
曲の始まりでピアノベースと共に使われている打楽器は、奈良時代から仏教儀式で使われてきたシンバルのような楽器、鐃鈸(にょうはち)です。静かな曲から一転して、ピアノと太鼓のダイナミックな掛け合いも「道満」の曲らしくアルバムの中では大きな聴きどころです。
8、晴明 (作曲 スガダイロー)
簀子の上での博雅と晴明との会話、すべてを達観したような晴明の雰囲気が伝わってくるような曲です。
9、しのびよる森の神々 (作曲 スガダイロー)
小説「蟬丸」の中からオノマトペ(擬音語)だけを抜き出し、そのオノマトペに実際の音をつけるという逆転の発想で、スガダイローがアルバムの中で「音の小説」にしたものです。その擬音に「蟬丸」曲のメロディが重なり、新しい一つの作品になっています。小説「蟬丸」に描かれた様々なオノマトペ、そのひとつひとつの音はスタジオでミュージシャンが実際に録音しました。例えば、曲の一番最初に出てくる「ほっ」は月の出の音、最後の方で4度鳴り響く銅鑼の音は四天王が次々に現れる様を表しているということです。小説「蟬丸」を読んでから音を聴いても、音を聴いてから「蟬丸」を読んでも、何度も楽しめるというCDBOOKならではのコラボ作品となっています。
10、陰陽師・メインテーマ~蝉丸は眠らない~
ベースとピアノだけの小編。
11、長慶子 (作曲 源博雅)
平安時代中期に源博雅が作曲したと言われている曲。様々な行事で参集者が退場する時の音楽として用いられてきました。雅楽で演奏される伝統的な「長慶子」とはまた違い、物語の中で森の精霊と呼応しあうかのような自然な演奏です。演奏の最後の方で背景に流れてくる音は、京都の街に唯一残る1200年前のものと同じ「糺ノ森の自然音」。耳を澄ますと、泉川のせせらぎ音の他に鳥の鳴き声や樹の葉の擦れ合う音など10種類ほどの音が聞こえてきます。
*「糺ノ森の自然音」と「下鴨神社の虫の音」は、京都精華大学教授小松正史さんによる録音。その時のエピソードは『蟬丸』のBOOK部分で小松さんが解説されています。音の専門家である小松正史さんの、音について書かれた文章も大変に興味深い内容です。